初めての京懐石

白洲夫妻が贔屓にしていた割烹の一つが京都南座近くの路地を入った「千花」です。2005年の夏に京都を訪れた折は、あいにく満席でした。どうしても京懐石をいただきたい衝動にかられ下賀茂神社脇にある「吉仙」に電話したところ席が空いているというので早速に暖簾を潜りました。ミシュランの星にこだわるのではありませんが、どちらの店も三つ星老舗で人気のある店です。そんな敷居の高い店に私のような一見さんが入ることは、いま思えば無謀でしたが海外駐在で幾度か修羅場は経験していたので特に身構えることはありませんでした。

ご主人の「まずはご一献」の盃から驚きでしたが供される料理の材料や味、盛付、器の完璧さに店内の凛とした清潔感と静寂感に感動しました。ほどなくご主人から「どなたかのご紹介で」と話しかけられ京懐石は初めてであること、白洲次郎が好きなこと、その白洲の贔屓だった「千花」にトライしたが満席だったことなど正直に答えると、ご主人の谷河さんは笑いながら「初めてがウチでよろしおしたかも知れませんな。うちは外人さんも多く時間があるかぎり懐石とは何かからご説明しているのですよ。わからないことは遠慮なく聞いて下さい」とおっしゃっていただき一気に緊張が解けたことを思い出します。

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初めての京懐石

その後、憧れの「千花」や、その弟さんの店「千ひろ」、「祇園丸山」、「瓢亭」などに行くことが出来ました。そのうちにひとり客には大店の料亭よりカウンターだけの割烹料理屋が向いていて、おもてなしも徹底され、料理も丁寧に作られ、間合い良く出していただけることがわかりました。行って見たい割烹や料亭はまだまだあります。機会を見つけては出かけたいと思っています。